渋谷。
渋谷。
渋谷。
気付いたら渋谷にいた。
「201×年になったら再開します」
という看板が貼られた謎の店の横を颯爽と歩く。
中高生のときはよく渋谷にいた。
渋谷を目指したというより、渋谷がそこにあったのだ。
たまたまそこが渋谷だというだけで、やることは
カラオケに行ったり、サイゼリヤでだべったり、
他の街の中高生と変わらない。
なので、渋谷を目指してきている中高生は本当に怖かった。
当時センター街を歩いていたときに、
ありとあらゆるゴミが寄せられる道の端で、
金色の髪をしたギャルとギャル男10人くらいが円になり、
その円の真ん中でバキバキのミニスカギャルがあぐらをかいているのを見て、
一生この人たちには敵わない、と確信した。
当時の渋谷は中高生のメッカだったのだ。
109-②の最上階の「プリクラのメッカ」の繁盛ぶりが
渋谷が中高生の天下にあることを物語っていた。
大学に上がる季節が近付いてきた頃、
あんなに繁盛していた「プリクラのメッカ」が閉鎖された。
ああ、時代が変わるのだ。
あれから何年過ぎただろう。
「プリクラのメッカ」の閉鎖を先駆けに、
キングス・クロスのような東横線の地上ホームも閉鎖された。
東急プラザも、パルコもなくなった。
その代わりに副都心線が通り、地下通路もできた。
ヒカリエが建ち、モディが建ち、
そして、変えようとしても変わらないものもあった。
センター街の看板は一向にセンター街のままだし、
宮下公園の治安はいつまでも改善されず、
潰れるかと思っていた「201×年になったら再開します」の謎の店は
本当に201×年に復活した。
渋谷には何かが生きている。
渋谷はどこかに向かっているのだ。
あぐらをかいたギャルの次に、渋谷のセンター街を制するのは誰か。