天の川のような街の光の中に、流れ星のように車が煌めく首都高速を走る・・・
そんなときにあなたの目の前にふと現れた塔はどちらでしょう。
東京タワー?それとも東京スカイツリー?
高度経済成長期から苦楽を共にしてきた東京タワーを推す声は大きいですが、
地図子は意外と東京スカイツリーの妖しい雰囲気が好きだったりします。
夜や雨の日はもしかしたらそのまま消えてしまうのかも?
と心配させてしまう、探したくなってしまう、蜃気楼のようです。
珍しくそんな東京スカイツリーを探しながら歩くのは、
ブラ地図子 -水戸編- に引き続き、春を先取り第2弾の旧中川です。
旧中川の「旧」ってなんだ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
実は普通の中川も新中川もあります。
これには荒川の歴史が関係しているので、少し歴史振り返りタイムです。
荒川は元々現在の隅田川を流路としていましたが、
1910年頃に大雨や台風による氾濫が多発します。
そこで17年かけて別に荒川放水路を掘り、1924年に放水されるのです。
この荒川放水路が現在の荒川の下流の流れであり、
このときに荒川放水路が元々流れていた中川を分断してしまいました。
今は荒川放水路に囲まれている、昔の中川の名残を「旧」中川と呼んでいます。
この地図は、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二)により作成したものです。
そんなわけでこの辺りはほとんどゼロメートル地帯なのですが、
東京スカイツリーを始めとした「高み」を味わうように歩きたいと思います。
れっつごー!
高さへホップ:逆井の富士塚
地図子が今回歩き始めたのは南端の荒川ロックゲート(A地点)です。
ブラ地図子 -京都・東山編- の蹴上インクラインがインクライン方式でしたが、
荒川ロックゲートはロック式という水位を調整して船を通行させる水門です。
安くパナマ運河観光気分を楽しみたければ荒川ロックゲートがオススメ。
後ろを振り返ると 地図子、たまに荒川を行く -平井大橋から河口まで- 以来、
1年半ぶりの荒川の船堀エリアです。
このときは荒川ロックゲートの存在に全然気が付いていなかったので、
いかに人は見たいものしか見ていないかがよく分かります。
早速旧中川沿いを歩き始めると、すぐ水が二手に分かれます。
左側の流れは小名木川で、番所の渡し付近でもあります。
実はこの小名木川、地図子ブログでも ブラ地図子 -浦安 後編- で、
浦安から日本橋に魚を運ぶときに使われたと紹介しています。繋がりますね〜!
珍しく旧中川の上にホームが建てられている、都営新宿線東大島駅の下をくぐります。
この先で首都高速7号線と交差する辺りには逆井の渡しもありました。
水が堰き止められていて流れが穏やかな旧中川では、
多くの人がボート漕ぎを楽しんでいます。
そんな人たちを眺めながら到着するのがC地点近くのふれあい橋です。
浅川好きの地図子は少しライバル心が高まりましたが、こちらも綺麗なデザイン。
ここで3月上旬辺りに有名なのが・・・
旧中川の河津桜です。
地図子は4年ぶりでしたが、休日だからか以前より人気スポットになっていました。
旧中川には東京大空襲でたくさんの人が飛び込んだと言われ、
ふれあい橋近辺では、毎年犠牲者を弔う灯籠流しも行われます。
河津桜を写真に納めてふと対岸を見ると、反対岸にもピンクに光る何かが・・・!
こちらは亀戸中央公園で梅の真っ盛り!
しばらくするとソメイヨシノも綺麗だそうです。
ここまで全然「高み」の話をしてないじゃないかーい!という方、お待ちかねです。
実は河津桜の近くにすっ飛ばしたB地点、逆井の富士塚が存在しています。
階段を上ると石祠がぽつんと立っていますが、富士塚そのものが浅間神社だそうです。
結構な高さがあり、低地の旧中川沿いでの富士信奉を垣間見ることができます。
「逆井の富士塚」と検索すると一番に現れるのは、
いつも楽しませていただいている id:massneko さんの記事でした。
高さへステップ:平井の富士塚
逆井の富士塚を後にすると、次にまた水の三叉路が現れます。
左の流れは北十間川なのですが、実はここ3区の境界線でもあります。
さあ、どことどことどこでしょう・・・
昔は平井の渡し、今は平井橋が架かる近くに本日2つ目の「高み」があります。
平井諏訪神社内の平井の富士塚(D地点)です。
平井の渡しの近くにあっただけあり、平井諏訪神社は下平井村の鎮守社でした。
あれ・・・?先ほどの逆井の富士塚と比べるとあまり高くないような・・・
今回地図子が驚いた「高み」は、平井の富士塚よりも、お隣の燈明寺・・・!
江戸名所図会に平井の渡しとともに描かれている由緒あるお寺ですが、
ここまで歩いた中で、東京スカイツリーを除いた一番の「高み」かもしれません。
高さへジャンプ:ゼロメートル地帯を支える高低差
そろそろお散歩も終盤に入ってきました。
中川特有のくねくね蛇行を楽しみながら、ゆったり歩きます。
旧・中平井の渡し、現・中平井橋の周辺にも、
ふれあい橋近くほど詰めて並んではいませんが、河津桜が綺麗に咲いています。
東京スカイツリーの下に見えているのは、吾嬬第二ポンプ場という旧中川らしさ。
最後のゆりのき橋を越えると、旧中川の水は終わりに近付きます。
水門で始まり、水門で終わるように水は吸い込まれていき・・・
水は木下川排水機場を通って、また荒川に出ます。
なぜ旧中川ではなく木下川?と思ったところ、
江戸時代ここにあった下木下川集落は荒川放水路が放水されたときに、
水の中に消えて廃村になったそうです。
100年前は東京でも流路変更による廃村があったなんて・・・と想いを馳せます。
水の流れは終わってしまいましたが、旧中川の流路はもう少し続きます。
木下川排水機場沿いをぐるっと回ると、あれ?こんなところに高低差?
実は平井住宅(E地点)が建っている低地が旧中川の暗渠です。
そして高く盛り上がっている部分が木下川排水機場が建つ堤防になります。
これが旧中川最後にして、最大の「高み」!5~6mの差があります。
堤防沿いの坂をえっちらおっちら登っていくと、最後に荒川に辿り着きます。
平井住宅が建っているところより荒川の水面の方が高いのがよく分かりますね。
ここまでで旧中川を歩く、は完了ですが、なぜわざわざ旧中川を北上したかというと、
最後に大好きな平井の本棚さんに立ち寄るためでした。
ちなみに平井の本棚さんで売っている「平井インスタ映えないまち歩き解説map」にも
旧中川を始め、平井の秘密がたくさん載っているので是非見てみてください。
荒川の歴史に本流された旧中川と周辺の今はなき集落たち。
でもそんなゼロメートル地帯だからこそ、ちょっとした「高み」が嬉しいのかも。
「高み」がないエリアだからこそ、あの東京スカイツリーがすっと飛び出ているのが、
今にも消えてしまいそうな不思議な摩天楼感を与えるのでしょう。
皆さんも3月上旬に、河津桜を楽しみながら旧中川を歩いてみては?♡♡