生きていると、逃げ出したくなる日もある。
逃げ出したいな、と思ったら、多分逃げ出した方がいい。
少し逃げ出せば気分が変わるのであれば、少し逃げ出すのだ。
逃げ出し過ぎなのでは、という心の疑問は一旦置いておいて、
今回は東急東横線沿いの駅で真面目に生きることに疲れたので、
東急東横線で逃げ出そうとした。
・・・と思ったら、やってきたのは東京メトロ日比谷線直通だったのだ。
日比谷線は普段乗らないが、うーん・・・
と思い切って乗ってみた。
どこかオアシスはないか、と日比谷線の路線図を眺める。
都電荒川線・・・
オアシスはここに決定した。
三ノ輪駅で降りると、当時まったく無縁だった下町情緒が広がっていた。
昭和な商店街を横目に、都電荒川線の小さいホームへ歩く。
女1人で午後3時くらいの都電荒川線にぽつんと乗って、揺られる。
どこを通るのかはよく分かっていない。
「お嬢ちゃん、どこ行くの?」
隣に座っていた60代くらいの男性1人と女性2人のグループがいて、
男性に話しかけられた。
「初めて都電荒川線に乗ったので、どこかぶらぶらしようと思っています」
と応えると、
「そうなのか~、僕たちもう大体ふらふらしたから、これを1枚あげるよ」
と、都電荒川線の回数券を1枚くださった。とても嬉しい。
「ありがとうございます。どのあたりに行かれたんですか?」
と聞くと、うーんと悩みながら、
「この旧古川庭園あたりがよかったよ!」
と教えてもらえた。
オアシスが具体化された。
駒込といえば、そのときの風景なのである。
北区の中に少し文京区が香っていて、人通りは少なく、
突如旧古川庭園のような大屋敷が現れる。
気軽さの中に、尊さがある。
駒込は気品と、人の優しさが染みる街だった。
それにしても、少しだけ気になっているのは、
男性1人に女性2人とは、どのような仲だったのだろうか・・・