代々木では、トンネルをくぐると別世界が広がる。
新宿と原宿というきらびやかな街の間に挟まれ、
世界と世界をひっそりと繋げる、どこにもあらずな空間だ。
地図子にとって、代々木のイメージというと「洋書」だ。
東京の隅々まで洋書を探し回った時期があったが、
代々木駅と新宿駅の間の紀伊國屋書店が一番品数が多かったのだ。
代々木駅の古びたホームに降り立ち、
踏み外さないように気を配りながら駆け足で階段を下り、
防空壕のようなトンネルを抜け、
改札で切符を通し、暗い階段を上がると、
紀伊國屋書店が入るガラス張りの建物が輝かしく迎えてくれる。
遠い世界からの数々の物語を乗せて。
そういえば最近紀伊国屋書店は縮小したらしい。
確かに私も洋書をインターネットで購入するようになり、
代々木駅に出向く機会も減った。
それでもやはり実際の紙の本を持つわくわくする感覚は、何事にも代えがたい。
地球の裏側の会ったこともない誰かの大切な宝物が、
紙という形で私の手に届き、私の宝物となるのだ。
さあ代々木。今日はどことどこの世界を繋ぐ。